2017 Toughroad SLR2 レビュー《3:操作性・フィーリング》

2017 Toughroad SLR2 評価

前回は〔2017 Toughroad SLR 2 レビュー《2:実走》〕で、”巡航“から”登坂“などの基本的な走行チェック的なインプレでした。

今回は、バイクの操作性やハンドリング、またドライブ系やコンポーネントの質感(フィーリング)をふくめた細かな情報をレビューします。



Toughroadの評価

2017 Toughroad SLR2 レビュー《3:操作性・フィーリング》
『SLR 2』はラインナップのなかでは廉価クラス。ただしToughroad(タフロード)には高性能なフレームとフォークを与えてあるため、廉価モデルと言えども侮れないスペックを持つ。さらに販売価格は税抜き価格で〈¥95,000〉とかなり買い得だ。(2018年モデルは、為替の影響で税抜き〈¥110,000〉となった。)

さて、廉価版のToughroadの操作性やフィーリングはどうなるだろう。

操作性

ハンドリング

Toughroadは、自転車のジャンルでいえば『アドベンチャーバイク』で、舗装化されていないグラベル(砂利道)などを走行する前提で開発されています。日本の道路では舗装化が広範囲にすすめられているため、あまり馴染みがないジャンルです。
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アドベンチャーバイクは、長距離走行に必要な装備をバイクへ積載するため、安定志向のハンドリングに設計されるのが多い。それはモッサリとした挙動で、スポーツバイクとは縁遠いものでしょう。
しかし、Toughroadは29er(29インチホイール)バイクでありながらも軽快なハンドリングを提供してくれます。中・高速コーナーでは、バイクを自然に傾けるだけで安定した旋回をはじめます。ヘアピンのようなタイトなコーナーでは、バイクをリーンアウトで倒し込めば、ワイドタイヤを装着した29erにかかわらずToughroadは軽快に曲がります。

はじめて29erバイクに乗るユーザーでも、Toughroadなら気構える必要はありません。

ハンドル

バイク操作に重要なハンドルバーは、GIANT(ジャイアント)純正[CONNECT XC RISER 31.8 640mm]。バーの幅は〈640ミリ〉と扱いやすい幅になっている。クロスバイクより幅広いバー幅であるが、悪路での操作性を考慮している。
岩場を走破する29er MTBの多くのハンドルバー幅が〈740ミリ〉あたりを採用するが、Toughroadはフラットなシングルトラック(獣道)までを想定した設計だから中間をとっている。しかし、体格によってはバー幅の変更をしても問題はありません。
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私の体格(身長:約166センチ)は日本人らしく腕足ともに長くはありませんが、〈640ミリ〉幅のハンドルバーのフィッティングは良好。ハンドルグリップは良い感じの位置にあり、勾配のある坂道登坂でも軽く抑えがきいてハンドルは左右にブレにくい。
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また、少々ガレた下りセクションでは、ちょうど良い感じに腕が湾曲するため、衝撃吸収アクションやホールディングがしやすくコントロール性は高い。ちなみに、ハンドルグリップは2016年モデルと比べて感触は柔らかめ。私はダイレクトな操作感のある若干硬めが好み。

ハンドルバーの重量は〈約290 グラム〉と重め。そのかわり”たわみ“は少なく剛性はシッカリしている。軽量化と、路面からの衝撃・振動吸収のためにカーボン素材のハンドルに換装するのもアリでしょう。


コーナーリング

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コーナーの旋回は、ホイールを含めてバイクフレームの剛性が高く非常に安定している。このあたりはフレームジオメトリが違う2016年モデルとくらべて変化は感じられなかった。

ターマック(舗装路)のコーナーリングでは、バイクの倒し込みでもブレないフィーリング。連続するタイトコーナーでも切り返しが楽しいくらい剛性はカッチリしている。これが心の余裕を生み、自分が走りたい走行ラインを多く選ぶことができます。
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グラベル(砂利道)では、砂利が大きさにかかわらずバイクは安定指向。サイクリング的な速度域であれば余裕のライディングができる。
タイヤは、2017モデルから自社開発の[GIANT SYCAMORE S 700x50C]を採用。タイヤのノブ(ブロック)パターンは、MTBのXC(クロスカントリー)向けのようなトレッドを採用しており、ダートを含めたオフロード走行のコーナーリングもドライであれば安定している。

乗り心地(フレーム/フォーク)

2017 Toughroad SLR2 レビュー《3:操作性・フィーリング》
新シリーズ発表から、たった1年でフレームジオメトリが変更されたToughroad。

設計変更の主な理由は、小柄なユーザーでも乗れることをメインにジオメトリが変更されているため、乗り心地に変化はないと予想していました。ところが、トップチューブを低く抑えるためシートチューブ長を短くしたことによって、シートポストの露出量が増えたため、2016年モデルよりシートポストが大きく撓る(しなる)ようになり乗り心地が良くなりました。

『SLR 2』のシートポストはアルミ製ですが、撓った感じは確認できます。上位モデルのカーボン製のばあいは、より明確に感じとれます。

このシートポスト周りの一点に関しては、2016年モデルとは大きな差が感じられますが、それ以外はフォークも含めて剛性は高くシッカリとしています。その剛性感は、キャリアとパニアケースを装着したときに一番分かりやすく、荷物を積載したままコーナー旋回中にギャップを越えても、不安を感じさせるヨレがなく安定しています。

また、ジオメトリ変更にはホイールベースの延長がふくまれており、ペダルの位置によってシューズとタイヤが接触することはなくなりました。


ホイール・タイヤ

ホイール

2016年モデルと仕様変更がないホイールは、リムが自社製[GIANT SX-2 32H]。ハブが[FORMULA DISC 32H]。
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リム形状は低めのディープリムな設計。スポークは前後とも32本で組上げてありますが、リム剛性が非常に高く、縦方向・横方向ともヨレないガッチリ感。振動吸収より強度を選び、重い荷物の積載にも負けない強靭なホイールです。
おかげで少々荒れたグラベル(砂利道)でも直進安定性は良好。ただし、障害物からのキックバックはそれなりに大きいです。

また、質量のあるリムの特性としてホイールの回転を持続しようとする特徴があります。これによって一度バイクが走り始めれば、あとは少ないペダリングトルクで走り続けることができます。この効果は意外と上り坂でも発揮されます。

タイヤ

近年オリジナルのバイクパーツを多く開発しているGIANT。その技術はToughroad 2017年モデルからタイヤ[GIANT SYCAMORE S 700x50C]として採用されました。
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タイヤ表面のトレッドパターンは低いノブが集合したパターンで、見た目より走行抵抗は少ないためペダリングは軽い。またノブ(ブロック)とタイヤ表面の柔らかさによって振動吸収性は高く、非常に乗り心地が良い。グリップも良好でオンロード走行はもちろんのこと、オフロード走行でも安定した走行をさせてくれる。

タイヤの重量は少々重く〈約730グラム〉。スチールビードであるため軽量ではありませんが、優れた振動吸収性と軽めの走行感でポイントが高い。あと、チューブの重量は〈約190グラム〉。このあたりを交換するだけで、かなりの軽量化ができます。

タイヤの推奨空気圧は〈2.1〜4.2 ber〉。このタイヤは衝撃吸収性に優れているため、私は〈約1.9 ber〉のエア圧で使用しています。キャリアを装着して重めの荷物を積載するなら〈1.9 ber〉以上のの設定になります。


コンポーネント

バイクのコンポは、ドライブ系とブレーキ系のすべてのパーツがSHIMANO(シマノ)製です。廉価なパーツ構成でありながら安定した性能を発揮しています。

シフター

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ドライブコンポーネントは、廉価グレードのMTBに多く採用される[SHIMANO ACERA]をメインに組上げられている。

変速を操作するシフターは、2本のレバーを押して変速する『ラピッドファイアー・プラス』を採用。レバーの入力操作では、小さいギア(歯車)への操作は、レバーを引いた瞬時に素早く変速ができ、大きいギア(歯車)への変速はレバー操作は大振りであるがスムーズな変速が可能。

廉価なシフターでありながらも操作は軽くスムーズ。幅広い年齢層に対応できる変速システムです。

ドライブトレイン

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前後変速の歯数は、前が3段〈44 × 32 × 22T〉、後が9段〈11-34T〉とワイドレンジな設定。

MTB系タイヤを装着した29インチホイールのバイクとしては、アウターチェーリングは〈44T〉と結構大きいため、少しの勾配でもミドルチェーリング〈32T〉を使用することは少なくありません。なので、勾配10%の坂になるとインナーチェーリング〈22T〉を使うことも珍しくありません。

このフロントチェーンリングの大きさは、平地を多く走行するユーザーは気にすることはありませんが、坂が多いルートを走行するユーザーは頻繁な変速操作が必要になるでしょう。

大きいホイールサイズと大きいフロントチェーンリングのおかげで、平地での巡行速度は高く、最高速度は脚力しだいで〈40 km/h〉以上は可能です。

ブレーキ

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SHIMANOのブレーキセットは油圧ディスクブレーキシステムで、ブレーキレバー、ブレーキキャリパーのすべてが[SHIMANO M315]で統一。ブレーキ制動時のレバー入力はかるく、ブレーキの効きは指の引きたいしてリニアに調整できる点は素晴らしい。また、指一本でタッチからタイヤロックまで制動コントロールが可能。

制動能力は高く余裕がある。峠道からの連続するワイディングロードを下る途中、制動時間を増やしても効きの低下はなかった。いつか、キャリアに荷物を積載した状態のブレーキ制動能力も確認してみたい。
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2016年モデルの[SHIMANO M355]からパーツ変更されていますが性能に大きな差はありません。ただし〈160 mm〉径のディスクローターのスリットデザインが変更されており、ブレーキの効き始めが少し甘めだが、わずかな違いでしかなく全く問題はない。

また、指の長さに適合させるためのリーチアジャスターも搭載される。幅広いユーザーの指の長さやレバータッチ感を調整し最適化することができます。


次回レビュー内容

2017年モデルは販売価格が安く、かなりお買い得になりましたが、パーツ構成が低グレードに換えられることもなく安定のクオリティです。

2016年モデルとフレームジオメトリが変更されましたが、スポーティな運動性能は受け継がれ、29er MTBのような軽快なハンドリングが楽しめます。それらにロングツアラーの耐久性と走破性を加えることで、ターマック(舗装路)からグラベル(砂利道)までスムーズな巡航性能を備えた、新世代のグラベルバイクです。

Toughroad SLR 2のパーツ換装

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年度モデルに関係ないことなのですが、管理人のように山岳ルートや高低差のある麓を走行するユーザーにとっては[SLR 2]のドライブ系のフロントチェーンリング〈アウター:44T〉は大きく、重量のあるタイヤとホイールの相乗効果もあって、峠へ続く登坂ではインナーチェーリング〈22T〉を使うことも多いです。このあたりを私の脚力と使用状況に合わせて改善するために、パーツ交換を検討しています。

『Toughroad SLR 2』のパーツ換装ができたら、フィーリングをふくめて新たな状況を更新します。次回は〔2017 Toughroad SLR 2《パーツ交換 軽量化:1》〕になると思います。



タフロード長期レビュー

スポーツ自転車は、買ったあとも意外と手を加えることがあります。基本は、細かく身体に合わせたり(フィッティング)。さらに、自分の求める走り方に部品を交換したり、より軽快に走行できるよう軽量化したりと、乗り手に好みに合わせたアップデートができます。

タフロードは軽量化すればクロスバイクのように高速に走れ、グリップの良い太いタイヤをはかせれば悪路も走れ、荷物を積載すればロングツーリングも可能です。また、ドライブトレイン(変速機・ギア)を変更すれば脚力と走行フィールドに最適化した走行も可能です。

そのような多彩な方向性に対応できることを Toughroad で実施して『GIANT Toughroad 長期レポート』として長期レビューします。

GIANT Toughroad 長期レポート